お酒という指標
当方お酒は前向きに美味しいと感じる二足歩行の生き物をやらしていただいています。
日本酒からウイスキー、焼酎、カクテルなど、様々なものを呑み、人生を謳歌してきた。
社会人のマストアイテムであるビールも最近美味しいと感じ、飲めるようになった。
しかしもっぱらハイボールでウェイ、ウイスキーでウェイ、ラム酒で大いなるウェイ、
ここだけ聞くと海賊だが、安心してほしい、大海原には全く興味もなく、ひとツナギの大秘宝などにも興味はない、
そんな海賊予備軍な僕だが、一つだけ、未だにわからないものがある。
ワインについてだ。
ワインが美味しい、それはわかるが、ワインの味についてはまったくわからないのが現状なのだ。
ワインの味を楽しむにあたって使用される表現方法は様々で、
「ミディアムボディ」「樽が効いている」「コルクの香り」などが一般的には多い、
もはや謎だ。
ミディアムボディとはなんだ?中肉中背という意味であろうか?
中肉中背のワインとはなんだ?普通なのか?一般的に社会に多く存在するワインという意味なのであろうか?
樽が効いている?これはどこで使用する言葉なのだろうか?
樽が効くとはなんだ?樽で与えるダメージが通常攻撃の1.5倍のダメージを与えるということなのか、それとも直接患部に行き届き、疲労や病気が治るということなのだろうか?
これは樽が効いてるからおじさんには効果抜群だな!
なんていう人は見たことがない、むしろいるとしたら仲良くなりたい、というかその人は、赤い帽子をつけた配管工か、ドンキーコングと言われる人種だろう、
そうこのような表現方法を僕もそろそろ30代が見えてきたので、使用してみたい。
ワインのわかる男として、世に名前を知らしめたいのだ。
ウイスキーでウェイではなく、ワインでファビュラスしたいのだ。
しかし僕の貧相な味覚では、ワインの味を表現することができない、
なんならそのワインのポテンシャルを感じることができないのだ。
ボディが効いたフルーティなピノ・ノワールとか言ってみたいし、
それで注文してみたい、しかし困ったことにそんなものが存在するのであろうか?
ボディが効いたフルーティーなピノ・ノワール…あるならとりあえず呑んでみたいものだ。
だからこそ、取引先や、友人、先輩などとワインを呑みに行った日には困惑するのである。
ワインがわからない人間にとっては「ワインリスト」というのは凶器でしかないのだ。
気取って、ワインリストを開いたところで、そこの文字列を解読することができないのだ。
まず産地が書かれていたとしても、なんのこっちゃわからんのだ。
これが楽器だったらわかるだろう、イメージが僕は付きやすいのだ。
しかしなにも知らない知識に対しては、イメージがつきようにもないのである。
そこでイケメンでお洒落な店員さんが言うのだ。「お好きなワインをお選びください」と
まてまて、こちとらワインのワの字もわからないのだ。
しかしここでぼくちんワインわからないんだー、なんておどけていった日には、侮蔑の目を向けられ、ワインオープナーで僕の脳みそをあけ、ピノ・ノワールやカベルネソーヴィニヨンなどを注入されるかもしれない、そうなっては良くて絶命だろう。
ワインバーに殺されないために、そして人間としての尊厳をなくさないために、大見得を切ってこう伝えるのだ。
「秋の夜長を感じる。そうだな今日のような素敵な時間を表せるような、そんなワインをくれませんか?」
もはや謎である。
抽象的すぎて文法なんてあったもんではない、低脳の極みである。
しかし僕の中のワイン好きというのはこんな意味のわからんことを言って悦にひたりがちだと思っている。
だからきっとこの回答は間違っていないはずなのだ。
心の中では嘲笑していることであろう店員さんは、かしこまりましたとだけ言って奥に消えていくのだ。
先輩や、お店で知り合った年上のダンディーな中年、色っぽく知的な雰囲気をだしてるけど話すとがっかりするようなお姉さん、
ワインのお店に行くと、いつもありがたくはた迷惑な説法をしてくれるのだが、
いつもわかったようにうなずき、ワインを水のようにガブガブ飲む辛うじて二足歩行の生き物、それを見かけたら僕だと思ってください。
「ワインはブドウ、シャルドネというのが基本的なんだが、産地や造り手によって全然違う、このワインは口当たりが良くてわかりやすいはずだぞ」
などと言われ、僕は赤べこのようにフンフンと頷き、すっとそのワインを口に入れる。
うん、美味い、このワイン美味しい。
それだけだ。他の表現方法は全くでてこない、フルーティーなとでかけたが、よくよく考えればブドウなのでフルーティーなのは当たり前なのだ。だって果物だもの、
これがひじきや、冬瓜などでできていて、フルーティーな香りがするのであればそれはすごいことだろう。
ブドウの臭いを嗅いで、フルーティーというのは当たり前、果物の香りがしないのであればそれはブドウに似たひじきかなにかだ。
口当たりが良いとはなんなのか?
なにが口にヒットするのか?ブドウの精霊か?それともワインの隠された攻撃性なのか?
わからないが、とりあえず水みたいに飲めるワインだということは理解した。
アルコールを感じず、サクサク飲めるもの、という認識はわかった。
だから飲みやすいですね!と純粋無垢な感じで答えるようにしている。
そこで気がついたワイン極論が、「赤ワイン」であるか「白ワイン」であるか、
そしてそこから、「飲みやすい」か「飲みにくいか」というもの分類することができるのだ。
これは味が全くわからない人だからこそ行き着いた理論であり、
ワイン好き、ワイン評論家などには行くつくことのない理論なのである。
世の中ではこのことを「暴論」とも言います。
この暴論によれば、簡単に分類できる。
「飲みやすい白ワイン」
「飲みにくい赤ワイン」
というように簡単に分類できるわけだ。
シンプル、これが一番である。仕事をする上でもシンプルでわかりやすく直感的なものがいいだろう。
ボディが効いてるや、芳醇なとかなどは幻にしかすぎない、
抽象的に言えば賢く見えるだろうと思いよくわからないものになるのだ。
ハルキストが話す言葉みたいな、というより村上春樹の文章のようにまどろっこしいものになるのだ。
世の中ではこういった意見を「偏見」と呼びます。
先程は芳醇なという言葉を使ったが、実際に言われると面を食らうものである。
ふくよかな果実味を感じに芳醇な……
まず芳醇の前にふくよかな果実味ってなんだ。
僕は20数年生きてきたが、使ったこともないし、習ったこともないぞ、
ふくよかな女性、とかは使ったことがあるが、ふくよかな果実味……
デブなフルーツ味ってこと?すごい、アホみたいな文章になった。
もはやファンタジーの世界だ。
ふくよかな果実味、それに加えて芳醇でいらっしゃるそのワインは、もはやファンタジーの世界と同じなのだ。
そう聞くと僕の中二心がくすぐられ、ワクワクしてくるのだ。
濃厚なバターを彷彿とさせる味わい、どこかアロマのようなワインだ。
の、濃厚な、ば、バターを彷彿……?
もうこの時点で僕は白旗を振るのだ。
ワインを呑んで、むしろお酒を呑んで、濃厚なバターを彷彿とさせる味に出会ったことがない、というかそれはむしろ濃厚なバターだ。カロリー値が化物のようなこってりとしたバターである。
そしてアロマのような……
アロマのようなという形容を僕は人生で使ったことがあるだろうか?
アロマという文化に無縁な人生を送ってきた僕には到底想像できないのだ。
濃厚なバターのアロマ、もはやそれはバターのなにものでもない、
とりあえずバターの香りが強く出るアロマグッズを想像すればよいのだろうか?
そんなものはヴィレバンですらみたことはないし、商品化しようとした企画は狂っているとしか言いようがない、
というかそれはもはやパン屋に行けば解決するだろう。
しかしワイン通という猛者はそれを理路整然と言うのだ。
僕はいつも思う。同じ液体を呑んでいるのであろうかと……
そこで気がついたのは、ワインを語るには、語彙力と想像力が必要なのだと、
もはや味云々ではなく、言ってしまえば大喜利大会にちかいのだ。
重厚なボディが炸裂し、チャレンジャーダウン、さすがチャンピオン、圧巻のボディーブローですね。
心なしかチャンピオンの汗が濃厚なバターを彷彿とさせる香りを放っています。
みたいな総評をしても問題ないのであろう、そう思うと奥が深いものである。
ワインって奥が深いなー
とりあえずワイン含めてお酒って最高
まぁ今日はこんな感じです。