関西に行ったのだ。
バンドで、関西に行った。
バンドで県外に行くというのが久しぶりで、なおかつフェスに出るというのが人生初めてだったので、非常に嬉しい。
そして、大事なのは関西に行ったということなのだ。
関西には僕の親友がいた。
大学生の時は、夏休みに京都に行き、そいつと会って、色々遊んだりしたものだ。
だから関西というのは、少なからず僕の人生に影響を与えているものだ。
この親友は名古屋からの付き合いで、高2のときなんか、ずっと一緒にいたような気もする。
その当時の恋人よりも、そいつと一緒にいた時間が長いようにも感じる。
そいつが大学で大阪に行き、僕は沖縄に行った。
恋人でもないのに、ましてや男同士なのに、ちょくちょく連絡をとっては、長電話もしたりした。
名古屋の訛りから、エセ関西弁に変わる親友に笑いながら、僕も少し口調が伝染ったりして、おたがいエセ関西弁になったりした。
そいつは建築の学科に進み、将来は建築士になるのだと言っていた。
だから音楽のことはお前に任せたよ。
なんて酔っ払いながら言っていた。
少しさびしいけど、なんか嬉しい、そんなやりとりをしていた。
大学二年に上がるころ、夏休みで実家に帰り、そのまま京都に遊びにいった。
そこで、そいつと合流して、京都で遊んだ。
そしてそいつが少し自慢気に言った。
「京都はラーメンが美味いんだよ」と、
こいつは何いってんだ?京都って鱧とか九条ネギとかだろ?
抹茶、お漬物、そのへんだろ?なんでラーメンなんだよ。
そう僕は思ったし、そいつに言った。
まぁいいから、そう言うと、そいつは僕をお店に案内し始めた。
「みよし」というラーメン屋だった。
京都はラーメンが美味いっていうから、京都ラーメンなのかと思ってたら、
長浜ラーメンと書かれていた。
おいおい、マジかよ、京都に来て長浜ラーメンかいなと、笑いながら店内に入った。
床がヌルヌルして、半分野外なお店、味がありすぎるだろうと、まだ成人もしてないない若き日の僕は思った。
そして、僕がメニューを探していると、親友が、「カタ2つ」と注文しはじめた。
よく見たらメニューはほぼなく、ラーメンぐらいしか書いてなかった。
あとはかき氷、どないやねん。
いいからいいから、気にいらなかったら奢るからさ、という親友にほだされて
注文したカタ麺の長浜ラーメンが目の前に来た。
おぉ、どこからどう見ても普通の長浜ラーメン、タネも仕掛けもない、
なにも期待せずに食べた。
めちゃ美味い、なんだこれ、めちゃ美味いぞ。
本当に感想がこれしか出なかった。
めっちゃ美味い、語彙力の崩壊、濃厚なスープが麺にからんでー…とかそんな言葉は出てこなかった。美味い。美味いぞみよし!
そして目の前に紅生姜や胡椒が並ぶなか、当たり前のようにいるそいつ、そう
「天かす」がある。
さっと親友の方に目を向けるとしれっと天かすを入れ始めている。
なぜか僕も負けじと天かすを入れて食った。
美味いじゃねぇか、合うじゃないか天かす。
そして二人同時で替え玉を注文、そんな思い出のラーメン
そのあと京都でいろんな奇跡があった。
けど、ラーメンが美味かったという記憶が強く残っているのだ。
沖縄に帰り、美味しいラーメンを食べても、ふと思い出すのだ。
そんなことを電話だったり、メールだったりで親友と話したりしていたが、
パタリと連絡が来なくなった。
ちょうど僕も忙しくなったりで気にしていなかったが、別の友人から連絡が来た。
その親友の訃報が届いた。
あまりにも突然で、なにを言っているかまったくわからなかった。
その後、親友の母親からも、連絡があった。
頭がま真っ白になるというはじめての体験をした。
それからというもの、関西に行くことがなくなり、
どこか自分の中で避けていたのかもしれない、
そんな僕が、先月、10年ぶりにバンドで関西にいったのだ。
音楽のことはお前に任せた。
そんな親友の言葉を胸に入れながら、飽きもせず、ダラダラと音楽をしていた僕が、
関西にライブをしに行ったのだ。
そんな僕がやることは一つ、そう、みよしのラーメンを食べるということだ。
京都に行くことがあったので、メンバーには、ラーメンを食いに行くという強く偏差値の低い伝言をし、観光は適当に、ラーメンを食いにいった。
そしてたどりついた。
みよし、変わらぬ姿でそこにあった。
店内に入る。相も変わらずヌルヌルした床、
そして素知らぬ顔でおいてある天かす。
そして注文はラーメン、麺の硬さはカタで、
いろんな事が頭を駆け巡った。
そしてラーメンを食べた。
美味い、美味いぞみよし、天かすも入れて食った。
美味い、うまい、うまい…
また食べれた感動、親友とまた来たかったという感想
そんな胸いっぱいな気持ちで、僕は替え玉を注文、
お腹いっぱいになり、また来れた喜びを噛み締め、
親友の顔、仕草、などを思い出し、
僕もふとつぶやいていた。
京都はラーメンが美味いんだよ。
そんな気持ちでいっぱいになった、関西ツアーだった。
ありがとう。
ライブはハプニングが満載だったけど、
出せるだけのことは出したつもりだ。
また行きたい、そして京都にいって、みよしを食いに行きたい。
今度はメンバー全員で、
そう僕は、関西に行ったのだ。
音楽と、思い出と、ラーメンと一緒に
まぁ今日はこんな感じです。